仏教

無上瑜伽タントラとは何か │ チッタマニターラ尊の灌頂会(6)

このタイトル記事のシリーズは、ダライ・ラマ法王猊下より無上瑜伽タントラ(チッタマニターラ尊)の灌頂を授かったことに直接的、間接的に関係している因縁について記載していきます。

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そもそも無上瑜伽タントラとは何か

2016年11月13日に、ダライ・ラマ法王猊下が日本において授けられたチッタマニターラ尊の灌頂は「無上瑜伽タントラ」に属する教えであると説かれています。

一体、無上瑜伽タントラとは何なのでしょうか。

その問いについて私の理解しているところを記載してみたいと思います。

小乗と大乗、顕教と密教

仏道修行の目的は生きとし生けるものすべての幸せのために自らが仏身を成就してブッダとなることです。

2500年前にブッダとなられた釈尊は、人々の幸せのために、それぞれの機根に応じた教えを説かれました。

御仏の教え(仏教)を大別すると小乗仏教と大乗仏教に分けられます

両者の大きな違いは修行の動機にあります。小乗仏教は自らの幸せのみを願い求めて修行し、大乗仏教は生きとし生けるものの幸せのためにブッダの境地を求め修行します。

そして、大乗仏教のなかでもブッダの境地を成就するのに優れた教えとして密教(金剛乗)があります。密教ではない大乗仏教は波羅蜜乗と呼ばれることもあり、小乗仏教と波羅蜜乗をあわせて顕教と呼ばれています。

波羅蜜乗と密教の違いは何かといえば、ブッダの境地を成就するための時間にあります。波羅蜜乗では三阿僧祇劫という気が遠くなるほど長い時間がかかります。しかし、密教においては、今生、または幾つかの生まれ変わりののちにブッダの境地を成就することができると説かれています。

「生きとし生けるものの幸せのために何としてもブッダの境地を実現したい」と強く願う優れた修行者のためにブッダが説いてくださった《速やかにブッダの境地を成就することができる秘密の教え》それが密教(金剛乗)です

密教のなかでも最も高いレベルの教え

14世紀のチベットで活躍したプトゥンという学僧がいます。プトゥンはチベット仏教史や経典の注釈を著したりもしました。プトゥンの最大の功績は、初期密教から後期密教までの密教の教えの分類法を確立したことです。

波羅蜜乗の教えは「スートラ(経典)」と呼ばれ、金剛乗(密教)の教えは「タントラ」と呼ばれています。プトゥンは様々なタントラ経典を教えの段階ごとに4つに分類しました。それは以下の4つです。

1、所作タントラ

2、行タントラ

3、瑜伽タントラ

4、無上瑜伽タントラ

1から4に向かうごとに教えのレベルが高くなっていきます

ちなみに、日本に伝わった密教の二大経典である「大日経」は行タントラに、「金剛頂経」は瑜伽タントラに属しています。無上瑜伽タントラは日本に伝わることはありませんでした。

無上瑜伽タントラには、下位タントラでは説かれていない甚深な教えが説かれているといいます。教えもより体系化され、性的エネルギーをもちいた教えやチャクラやクンダリーニに直接働きかけるような教えなども説かれているといいます。

 

無上瑜伽タントラの修行とタントラの種類

生起次第と究竟次第

無上瑜伽タントラの修行は「生起次第」と「究竟次第」の二段階に分かれています

顕教と密教の違いは本尊瑜伽の有無にあると言われます。本尊瑜伽とは自己を本尊として立ち上げて瞑想する修行です。

生起次第では、修行者自身が自己を本尊として立ち上げて、本尊の曼荼羅を観想します。そして、死・中有・再生のプロセスを浄化してブッダの法身・報身・応身を成就する(三身修道)ことを観想の上で達成するといいます。

究竟次第では、それを現実に修行者の身において実現するといいます

ツォンカパ大師は生起次第を修行してから究竟次第を修行するという階梯の重要性を繰り返し説かれました。

無上瑜伽タントラの経典

次に主な無上瑜伽タントラに属する経典を記載してみます。

・秘密集会タントラ(グヒヤサマージャ・タントラ)

・時輪タントラ(カーラチャクラ・タントラ)

・ヘーヴァジュラ・タントラ

・最勝楽タントラ(チャクラサンヴァラ・タントラ)

・大幻化網タントラ(グヒヤガルバ・タントラ)

・大威徳金剛タントラ(ヴァジュラバイラヴァ・タントラ)

 

参考となる書籍

入門となる書籍

本格的に学ぶための書籍

チベット密教の法具

チベット密教では様々な法具が使われて儀軌や修行が行われています。

金剛鈴と金剛杵

シンギングボウル

ティンシャ

 

【目次】ダライ・ラマ法王猊下が、日本に於いて初めて無上瑜伽タントラの灌頂を授けられた、チッタマニターラ尊の灌頂会このタイトル記事のシリーズは、ダライ・ラマ法王猊下より無上瑜伽タントラ(チッタマニターラ尊)の灌頂を授かったことに直接的、間接的に関係し...