チベット密教には「心の訓練(ロジョン)」と呼ばれる教えが受け継がれています。
この教えの目的は、自他を不幸せにする原因である「自己愛着」を払拭し、他者へのいたわりと思いやりを培うことだといいます。
この記事では「心の訓練」の教えのなかでも特に有名な「心を訓練する八つの詩頌」を紹介したいと思います。
ランリ・タンパ「心を訓練する八つの詩頌」
1 如意宝珠にもまさる
もっともすぐれた利益が
すべての衆生によってもたらされるのだという思いで
常に衆生を慈しむことができますように
2 どこであれ、誰と出会おうとも
自分自身を劣ったものと見なし
心の底から他者をすぐれたものとして、
慈しむことができますように
3 あらゆる行為をするときは
自分自身の心の中でよく吟味し
それが自分と他者を危険に陥れる煩悩であるなら
すぐに確固としてそれに立ち向かい、退かせることができますように
4 性根の悪い衆生や
罪や苦しみに苛まれている者を眼にしたときには
貴重な宝と出会ったときのように
めったに見出せない者として、慈しむことができますように
5 他人が私に対する嫉妬から
罵り、あざけるなどの不当な扱いをしようとも
自らが損を引き受けて
勝利を他人に捧げることができますように
6 一生懸命につくした相手が
期待に応えてくれるであろう相手が
理不尽にも私を傷つけたとしても
その相手を最良の友(師)と見なすことができますように
7 つまりは、直接であれ間接であれ
幸せと利益をすべての母なる衆生に捧げ
すべての苦しみや障害が
秘かに私にもたらされますように
8 それら心の訓練(ロジョン)のすべては
世間八法を思考する垢に汚されることなく
あらゆる現象は幻であると知ることにより
執着がなくなり、捕われの状態から解き放たれますように
『チベット密教 心の修行』
八つの詩頌の理解を深めるために
参考書籍
「心の訓練」とは、心を浄化する、あるいは心を教化するためのひとつの方法です。
「心の浄化」や「心の教化」も、その目的は、他者の役に立つことです。
そして、他者の役に立つことは、自分自身のためにもなります。
「自他の幸せのために心を教化する」ことこそが、仏教なのです。
このように、「あらゆる問題はただひとつ」なのです。
それが「自己愛着」です。
私たちはいままで、苦しさや憤りや虚しさなどの問題を、自分以外の何かのせいにしてきました。
誰かのせいにしたり、周囲の環境のせいにしてきました。まったく疑いもせずに。これはいまにはじまったことではなく、遥か遠い過去世からそうしてきているのです。
あらゆる問題や不満は、どこから生まれるのかを注意深く調べることです。
それによって、すべてが「自己愛着」から生まれることに帰結するはずです。
ダライ・ラマ法王による詩頌の解説
http://www.dalailamajapanese.com/teachings/training-the-mind
ダライ・ラマ法王の「心を訓練する八つの詩頌」の法話