スワミジの尊称で知られるスワミ・ヴィヴェーカーナンダは「私は40才までは生きないだろう」という自らの言葉通り、39才5ヶ月24日間という短い期間で生涯を終えました。
しかし、そのお仕事は「人々が向こう1500年間、十分、間に合うものを与えた」という言葉通り、いまもなお世界中の人々を鼓舞しつづけています。
この記事では、スワミ・ヴィヴェーカーナンダの生涯について、スワミジの周囲の方々などの言葉やエピソードという視点から眺めてみたいと思います。
目次
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ノーベル文学賞受賞者のロマン・ロランが語ったスワミジ
フランスの文豪でありノーベル文学賞を受賞したロマン・ロランは戦争に反対し続けた平和主義者であり、ガンジーやアインシュタインとの交流も深かった方です。
あるとき彼は妹が英語から仏語に翻訳してくれたヴィヴェーカーナンダの言葉を読み、衝撃を受けたといいます。
彼の言葉は偉大な音楽であり、そのフレーズはベートーヴェンのスタイル、心をかき立てるそのリズムはヘンデルの合唱曲のようだ。
彼の言葉に触れると、体に電流が走ったかのような興奮を覚えずにはいられない。
そして彼は「ヴィヴェーカーナンダの生涯と普遍的福音」という本を書き上げました。そして彼は次のように語りました。
その燃えるような言葉が、この英雄から発せられた時、どれほどの衝撃と歓喜がもたらされたことだろう。
(ヴィヴェーカーナンダの生涯と普遍的福音)
明治天皇御自身がスワミジを日本に公式に招待したエピソード
明治天皇は、どこからスワミジのことをお知りになったかは明らかになっていませんが、当時、公式にスワミジを日本に招待されようとなさいました。
以下は、スワミジの弟子であるマンマタナート・ガングリが、日本への招待がベルル・マトのスワミジのもとに届けられたときのことを回想したものです。
午後四時頃、日本領事がスワーミージーに会いにベルルにやって来ました。
領事はスワーミージーがいつも客人を迎える内側のベランダに置かれたベンチに座るように言われました。
賓客だと伝えられましたが、スワーミージーが来るまではしばらく待たねばなりませんでした。
スワーミージーは領事のそばの椅子に腰掛け、通訳を通しての会話が交わされました。
儀礼的な挨拶の後で、領事は以下の主旨の話をしました。
『天皇陛下はあなたを日本に迎えたいと非常に熱心におっしゃっておられます。
ご都合の良いときにできるだけ早く来日して頂きたいとのご要請です。
日本はあなたの唇からヒンドゥ教について聞くことを熱望しおります』
(スワーミー・ヴィヴェーカーナンダと日本)
しかし、この時、スワミジは健康状態を崩しておられ、とても日本に行くことは叶わない状態でした。
その後、スワミジが日本の地を踏むことはありませんでした。
しかし、スワミジは肉体を離れる日に「日本のために何かをしたい」という言葉を残されたそうです。
スワミ・ブラフマーナンダがスワミジについて語った言葉
スワミ・ブラフマーナンダはスワミジの兄弟弟子であり、ラーマクリシュナ僧団の初代総院長であった方です。
かつてシュリ・ラーマクリシュナはこのようにおっしゃいました。
「ナレン(スワミジ)やラカール(ブラフマーナンダ)のような少年たちは神から与えられた使命をもって生まれてきているのだ。彼らに奉仕することは神に仕えることだ」
(永遠の伴侶)
それでは、ブラフマーナンダの言葉からスワミジに関係が深い言葉をご紹介します。
もし人が、活動の報酬をねがうことなく無視の気持ちで働くなら、仕事は決して束縛をつくるものではない。
スワミジーはよく、「仕事は礼拝だ」と言った。誰もかれもが四六時中瞑想することなど、できるものか。
それだからスワミジーが、人々がらくに神との合一を得られるように、無私の奉仕を教えたのである。
すべての仕事は主の御仕事である、ということを知れ。
働いている間は自分を忘れる、ということを学べ。全ての霊的修行の目的は、エゴの感覚を破壊することである。
(永遠の伴侶)
人類に、同胞に、苦しんでいる人々に仕え、奉仕する道をヴィヴェーカーナンダが説き始めたとき、師であるラーマクリシュナはそのようなことは教えなかったと反対した兄弟弟子もいました。
しかし、ブラフマーナンダはスワミジの言葉はラーマクリシュナの言葉であるという認識をもち、その教えの意味を深く理解し、スワミジとともに兄弟弟子たちを導き続けました。
それらは、一切のなかに神がおられる、一切のものは神の現れであるというヴェーダーンタ(不二一元論)の教え、そして、彼自身の悟りの経験に裏付けられたものでした。
全ての生きものの中に神がおいでになる、ということは本当だ。
しかしかれのより大きな現れは人間の中に見られるのだ。
それだからスワミジーが、人類に奉仕することをわれわれにすすめたのである。
(永遠の伴侶)
岡倉天心が語ったスワミジ
明治期の日本の思想家であり美術運動家として有名な岡倉天心もスワミジの魅力に魅せられた一人でした。
天心がスワミジについて記した手紙から引用します。
「最近この地を訪れて、スワーミー・ヴィヴェーカーナンダにお会いしました。霊性の巨匠で、並ぶものなき碩学です。
現代最大の偉人と思われます。インドのどこに行っても、彼を敬愛しない人はいません」
「敬愛するスワーミーは、見事な英語を話されます。
西洋・東洋の学問に完璧に精通していて、その両方が統合されているのです。
全一性の宗教を教えておられます」
「私が帰国する際に、スワーミーを日本にお連れしたいと考えています」
(スワーミー・ヴィヴェーカーナンダと日本)
大聖ラーマクリシュナがスワミジについて語られた言葉
スワミジの師であるシュリ・ラーマクリシュナは、スワミジが神の化身であるとご覧になっていました。それはお二人が初めてお会いした際のラーマクリシュナの言葉にあらわれています。
「ああ!ずいぶん遅かったね。こんなに私を待たせるなんてひどいじゃないか!世俗的な人々の安っぽい話で耳にたこができてしまったよ。ああ、私の思いを分かってくれる誰かに心を打ち明けることをずっと待ち望んでいたのだよ!」
それから合掌しておっしゃった。
「神よ!あなたが人間の不幸を取り除くためにこの世に生まれた古代の聖者ナラ、ナーラーヤナの化身であられることを、私は知っています」
(スワミ・ヴィヴェーカーナンダの生涯)
ラーマクリシュナはかつてサマーディのなかで非常に高次の領域に七人の尊いリシが瞑想に浸っている姿をご覧になられました。そしてそのリシの一人の生まれ変わりがヴィヴェーカーナンダであることを語られていました。
ラーマクリシュナがスワミジについて語られた言葉を引用してみます。
「ナレーンドラは、絶対の領域という非常に高い段階に属している。男らしい性質をしている。ここにはたくさんの信者が来るが、彼のような者は他にはいない」
「私は時々信者を吟味するのだよ。ある者は10枚の花弁を持つ蓮のようであり、ある者は100枚の花弁のある蓮だ。しかしそのなかにあって、ナレーンドラは1000枚の花弁のある蓮なのだ」
「他の信者が瓶や水差しなのに対して、ナレーンドラは大きな樽だ」
「他の信者が水たまりか水槽ならば、ナレーンドラはハルダルプクルのような大きな貯水池だ」
「魚に喩えれば、ナレーンドラが大きな赤目の鯉で、他の人はうぐいか、わかさぎか、いわしのようなものだ」
「ナレーンドラは、たくさんの物を収められる巨大な貯蔵庫だ。内側が空洞になっている竹のようだ」
「ナレーンドラは何の支配も受けない。執着や快楽に支配されない。まるで雄の鳩のようだ。口ばしをつかまえようとすると、逃げ去ってしまう。だが雌の鳩ならじっとしたままだ。集まりの席でナレーンドラが一緒にいてくれると、私はたいそう頼もしく感じる」
「ナレンは、いつの日か世界を揺るがせる」
世界宗教会議の際の新聞記事がスワミジについて記した言葉
彼こそは間違いなく宗教会議における最高の人物である。彼の講演を聞いた後では、博識なかの国に宣教師を送り込むことの愚かさが身に染みる
(ニューヨーク・ヘラルド紙)
宗教会議でのスワーミー・ヴィヴェーカーナンダは、その感性と容貌が放つ威厳から大変な人気者となっている。演壇を通り過ぎるだけで拍手が湧き起こる。そしてこの数千の人々からの格別な支持をまったく自惚れることなく、子供のように喜んで受け入れている。・・・宗教会議では、プログラムの最後まで人々が帰らないように、ヴィヴェーカーナンダを最後に登場させるようにしていた。・・・コロンブス・ホールの4000人の聴衆は、ヴィヴェーカーナンダの話を15分間聞くために、期待に胸を膨らませつつ、扇で煽ぎながらにこやかに座って1、2時間も待ち続けた。最高は最後まで取っておく、という古くからの法則を議長は知っていた
(ボストン・イブニング・ポスト紙)
名もなき方々が語ったスワミジについての言葉
とあるユダヤ人の知識人の言葉です。
ヴィヴェーカーナンダの話を聞いて、初めて自分の宗教ユダヤ教が真理であること、そしてスワーミージーが自分の宗教だけではなく、世界の全宗教を代表して語ったことに気づきました
(スワーミー・ヴィヴェーカーナンダの生涯)
次はハーバード大学の教授の言葉です。
我々博識な学者連中が束になってもかなわない人物(スワミジ)がここにおります
(スワーミー・ヴィヴェーカーナンダの生涯)
次はインドのとある教養人の言葉です。
彼の姿からは、崇高さと素朴さがはっきりと見て取られました。浄らかなハート、純潔と禁欲の生活、開かれた心、自由な精神、広い視野、そして深い思いやりがスワーミーの際立った性質でした
(スワーミー・ヴィヴェーカーナンダの生涯)
終わりに
いかがでしたでしょうか。
たくさんの方々の視点からスワミジについて語られた言葉をたどることで、よりスワミジの人柄や生き方、そして、世界に与えた影響を感じることができると思います。
スワミジの生涯を詳しく知りたい方には次の書籍がオススメです。